うでを酷使した後、肘が痛くなること経験したことありませんか?
テニスのバックハンドで球を打ち返す動作で良く発症する疾患なので「テニス肘」と呼ばれます。医療機関での病名は「上腕骨外側上顆炎」といいます。
テニス以外にも、
- 引越で段ボールを何箱も運んだ
- 調理場でフライパンを使うと痛い
- 肘が痛くて雑巾が絞れない
など、日常生活で肘周りの筋肉に負荷が掛かっても生じます。
これは、下記の前腕にある複数の筋肉が、上腕の外側の一箇所に集中して付着しているため、一点集中で負荷がかかり、特定の部位に痛みを生じます。
- 手首を反らす筋肉(長・短撓側手根伸筋)
- 前腕を捻る動きをする筋肉(回外筋・腕橈骨筋)
- 指を伸ばす筋肉(尺側手根伸筋・指伸筋)
診断
問診により、このようなエピソードがあれば、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑い、身体所見を取ります。
この身体所見で、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)であるとの確信を得たのちに、超音波検査にて、筋肉や腱の炎症の状態を評価します。
中指伸展テスト
指を拡げた状態で指を反らす方向に力を入れてもらい、中指を押さえると肘に痛みが生じる。
Thomsenテスト
手をグーにして、手首を反らした状態で、グーにした拳を引っ張ると、肘に痛みが生じる。
治療
薬物療法
NSAIDs内服(ロキソニン錠・ボルタレン錠など)
いわゆる ”痛み止め” と呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛薬のことで、英語の頭文字をとって、NSAIDs(エヌセイド)と呼ばれます。 テニス肘のような、筋肉や腱の急性期の炎症による痛みには効果的です。
ただし、胃腸障害、腎障害等の副作用もあり、特に高齢者への投与は慎重に行います。
ロコアテープ
NSAIDsの強力なシップ薬。シップというと「本当に効くの?」と思われる方も多いのですが、このシップは良く効きます。NSAIDsの内服よりも、体に吸収される薬剤の量は少ないので副作用も少なく、一方で、患部には重点的に薬剤がしみ込み、消炎鎮痛作用を発揮します。
エルボーバンド
肘の一点に集中して圧力をかけて、固定することで、手首の負担を減らす装具です。
痛みが引いてきたら徐々に外して、後述の、理学療法を組み合わせ、エルボーバンドを装着していない状態で痛みが出ない動きを増やし、エルボーバンドの離脱を図ります。
ステロイド注射
ステロイドには炎症を取り除く効果があり、痛みの発生源となる局部に注入することで、痛みが軽減します。ただし、付着部に起きている筋肉や腱の損傷が治癒するわけではないので、注射で痛みが治まったからといって、また腕を使ってしまうと、ステロイドの効果が切れる頃に再び痛み出し、慢性的な痛みに移行してしまう恐れがあります。初回のテニス肘には有効ですが、慢性的で反復するテニス肘に、むやみにステロイド注射を行うことは慎重に判断する必要があります。
理学療法
急性期の痛みが治まってきたら、温熱療法や電気刺激治療、ストレッチなどの理学療法を行います。ステロイド注射は即効性がありますが、一時的な治療で、長期的で根本的な治療としては、理学療法が必須となります。
予防のためにできること
テニス肘を起こさないためには、肘に繰り返し負荷のかかる運動や作業を避けることがとても大切です。
当院では患者様お一人お一人に合わせて、自宅や職場で行えるアドバイスを実施しています。
日々の生活にストレレッチを取り入れて、繰り返し負荷がかからないように気をつけましょう。
テニス肘は、普段の動作を見直すことが、大変重要です。
持ち方を変える、反対側で握る、原因となっているスポーツや調理で使う道具を変える、フォームを改善する、などを普段から心掛け、肘への負担がかからないようしていきます。
当院では、テニス肘にならない動作や、痛みが和らぐストレッチ法などを指導しています!
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