歩行時の股関節周囲の痛みと関節の動きが制限される疾患です。
立ったままでいることや、歩くことも困難なるため、日常生活に大きな支障をきたします。
男性よりも圧倒的に女性に多い疾患で、好発年齢は50歳以上です。
女性に多いのはホルモンのバランスで骨が弱くなりやすいことが関係しています。
重いものを持つ仕事や肥満などで、股関節に負荷がかかる生活を送っている方は変形性股関節症になりやすいと言えます。
診断
「股関節が痛い」との訴えで受診する方はたくさんいらっしゃいますが、痛い場所が足の付け根であるだけで、実際は股関節の痛みではないことがほとんどです。問診や身体所見で、股関節由来の痛みなのか、股関節の可動域制限の有無を調べます。
その上で、股関節に負荷を掛けたときに痛みが出るようであれば変形性股関節症を疑い、レントゲン検査を行います。
レントゲン検査
- 大腿骨頭と臼蓋の隙間が狭くないか
- 大腿骨頭が臼蓋に充分に収まっているか
- 臼蓋がすり減ることによる骨の突出(骨棘の形成)
- 大腿骨頭の変形
このような所見があれば変形性股関節症と診断されます。
治療
薬物療法
ロキソニン、ボルタレンなどの消炎鎮痛剤や、トラマドールなどのオピオイドを組み合わせて、疼痛緩和を行います。
栄養を組み合わせた運動療法
適切な栄養管理の下で筋力強化を行うことが重要です。
股関節は太ももの筋肉で覆われており、太ももの筋肉を強化することで、股関節が安定し、痛みの軽減と症状の進行を止めることが期待できます。太ももの筋肉は前だけでなく、内側と外側を均等に強化することで、全方向性から股関節の安定性が得られます。太ももの内側の筋力強化はボールを挟んで太ももを閉じるような運動が有効です。太ももの外側の筋力強化は横向きになって足を広げたり、ゴムを巻いて太ももを広げるような運動が効果的です。
生活の改善
股関節にかかる重力を減らします。減量を行うことで、股関節の負荷を減らすことができますが、食事制限による減量では、主に太ももの筋肉が減ってしまい、股関節の安定性を損なってしまうので注意が必要です。たんぱく質の摂取を続け、太ももの強化を行いながらの減量が必要になります。
他に、杖やシルバーカー等の歩行具を用いて、股関節の負荷を減らすこともできます。
手術療法
骨切り術
初期段階の変形性股関節症には、関節を温存し、臼蓋と大腿骨頭の位置関係を調整する骨切り術を選択します。位置関係を改善することで、関節の安定性が増し、痛みの軽減が得られます。
人工股関節置換術
進行した変形性股関節症の場合は、臼蓋と大腿骨頭を人工のものに入れ替える手術を行います。
予防のためにできること
当院では、変形性股関節症の初期の段階から関わり、痛いから歩かない、歩かないから脂肪がついて筋肉が減る、股関節の安定性が悪くなり体重で負荷が大きくなりさらに痛くなる、という痛みの悪循環を断ち、症状の進行を食い止めることに力を入れています。そのためには、適切な栄養管理と、股関節に負荷を掛けない運動療法の両面からのアプローチが重要となります。
手術療法をすべきか迷っている方は、是非ご相談ください。