足関節捻挫で、よく損傷される部位は前距腓靭帯(ATFL)です。
前距腓靭帯(ATFL)の解剖
前距腓靭帯(ATFL)は腓骨遠位前方から距骨に付着します。そのため、足関節を底屈させたり、前方に引き出したりするとストレスをうけます。急性足関節捻挫の約20%が慢性足関節症になってしまいます。
足関節捻挫の診断
評価にはレントゲン・MRI・エコーがあります。
レントゲン
正面像
正面像をとるときには第2趾と踵結んだ線が10度内旋するようにします。
そうすることにより、脛腓関節を正面を捉えることができます。このイメージはエコーを患者さんに当てるときにも重要です。
側面像
ストレス撮影を用いない通常のレントゲン側面像においても距腿関節の異常をみとめることがあります。正常な脛骨天蓋は距骨側が凸、脛骨側が凹になります。この曲率半径は一致するのが正常です。
しかし、足関節捻挫をしてしまうと距骨が前方に偏位し、脛骨天蓋の前縁に距骨滑車が衝突したままになってもどらないことがある。こういった症例では、理学所見として背屈制限がみられます。
MRI
MRIでは、断裂を可視化してみることができます。他の靭帯も前距腓靭帯(ATFL)と同様の走行をしているわけではないため、このカットをしてもほかに損傷が疑われる靭帯があっても評価しにくいとうのが難点です。またMRIだと動的な評価も行えません。そのため、MRIよりもエコーでの評価が有用です。
前距腓靭帯(ATFL)は関節包靭帯であるため経過とともに再生します。断裂した靭帯が戻るかどうかは定かではありません。
靭帯の連続性は回復して、捻挫の痛みがなくなっても、関節可動域の異常は残ります。
そこから考えられることは靭帯は連続性がもどっていても、機能は完全に戻っていないのではないか、ということです。
エコー
即時的に検査が可能で、重症度分類がしやくす、前距腓靭帯(ATFL)の描出が容易です。
抽出方法
まず下腿遠位前面に当て、脛骨と腓骨を描出します。次に遠位方向へプローブを移動し、脛骨が消えていくのを観察できます。
さらに遠位へプローブを移動すると、三角形の距骨が出現します。
そのまま遠位へ行くと、腓骨の形が角張った滑り台のような形になります。
これが前距腓靭帯(ATFL)の腓骨付着部になります。
腓骨付着部を出したまま、距骨側を回転させ、なだらかな距骨側付着部を描出します。
この付着部の骨形態をランドマークとして覚えておけば、簡単に描出できます。
足関節捻挫の治療
エコーで損傷度を見分けてからテーピング・サポーターで十分なのか、それともギプス包帯固定、ギプスシーネ固定が必要なのかを判断します。足関節に対して手術をすることはほとんどなくなりました。よほどの複合的な損傷でない限りは手術の選択肢はありません。