「ぎっくり腰」というのは実は、診断病名ではありません。世間一般的に、大きな衝撃が加わるわけでもなく、日常生活を送っていて、急に腰が痛くなることを総じて「ぎっくり腰」と呼びます。医療機関での病名としては、
- 急性腰椎捻挫
- 急性腰椎椎間板症
- 急性腰椎椎間関節症
など、慢性的な痛みやコリではなく、急性に発症した腰痛の総称といえます。発症が急性でも画像診断で、圧迫骨折や腰椎分離症、腰椎すべり症など、腰椎の形状に変化が生じるような病態は、ぎっくり腰とは呼びません。
ぎっくり腰に至る経緯
急に腰が痛くなるきっかけとしては、
・物を持ち上げた
・咳やくしゃみ
・物を拾うなど前屈みになって
・長時間座っていて
・転んで腰を捻って
・朝起きたら痛かった
などなど
普通に日常生活を送っていて、不意に何気ない動作をして発症することが多くあります。
20kg・30kgの重量物を持ち上げたなどの、分かりやすいきっかけがある場合はむしろ少ないです。
身体所見
・椎間板
・腰の関節
・腰の筋肉
痛みの原因がどこにあるのか、身体所見で探っていきます。実際には、上記のうち、どこかひとつだけが原因となっていることよりも、複数の原因が重なって痛みが出ている場合がほとんどです。
腰を反らしたときに痛いのか、前屈みになったときの方が痛みが強くなるのか、押して痛い部位はどこか。などにより、腰の状態をある程度、大まかに把握します。その上で、椎間板の損傷の有無、関節の状態、腰椎の配列、骨折の有無などを診断するために、画像検査を行います。
治療方法
コルセットで腰の安静を保ちます。また、痛み止めの内服や湿布、場合によっては坐薬の処方も検討します。
より積極的に、ぎっくり腰による痛みの治療を希望される場合は、神経ブロック注射も検討します。
痛みの原因がどこにあるのか確認し、患部に直接針を進めて、局所麻酔薬と必要に応じ炎症を抑えるステロイド薬を注入します。筋肉による痛みが原因の場合は、エコーガイド下に筋肉と筋肉の間のスペース(ファシア)に生理食塩水を注入することで痛みの軽減が得られることもあります。
予防のためにできること
普段、運動習慣や活動性の高い方の方が、デスクワークなどで活動性の低い方よりも、ぎっくり腰になりにくい、という大規模な調査結果があります。これは、体を多く動かしている方が、腰の安定性が高くなり、腰に対する少しの衝撃では損傷が起きにくい身体になるということだと思います。腰痛になりやすい方は、簡単に行ってしまえば「運動不足」ともいえます。
ただし、やみくもに何でも運動すればいいかというと、特に腰痛持ちの方は注意が必要です。腰に負荷の少ないストレッチを充分に行ったうえで、ジョギングや水泳など、状態に合わせた運動療法が必要です。