腰部脊柱管狭窄症ってどんな病気?

腰部脊柱管狭窄症は、若い人よりも、60歳以上の年配の方に多い疾患です。

治療が必要ないほどの軽度のものも含めると、70歳以上の4割が腰部脊柱管狭窄症という調査結果もあり、加齢性の変化といっても良いでしょう。

下記のような症状があったら、腰部脊柱管狭窄症かもしれません。

  • 長時間座った後の歩き始めの足まで響く痛み
  • 数分歩くと足がしびれてくる
  • 手押し車などで腰を丸めて歩くと痛みが出ない
  • 歩くと痛くなるが、自転車はどこまででも行ける
  • 寒い日や雨の日は特に痛くて歩けない
  • お風呂に入って温まると調子が良い
  • 足の裏に薄皮が張り付いたように感覚が鈍い

骨の中の神経の通り道である脊柱管が、狭くなることで起こる

背骨の中には、脊髄神経が通っています。
脊髄神経は手足を動かすなど、知覚神経をつかさどる大事な神経なので、骨の中に筒状に穴が開いていて、その中を通っていることで、保護されています。その筒状の神経の通り道のことを「脊柱管」と呼びます。

脊柱管が狭くなるということは、脊髄神経が通る通り道が窮屈になるということなので、姿勢によって神経が圧迫されたり、脊柱管の中を通る血管が圧迫されます。神経や血管が圧迫されると痛みやシビレがでます。神経に血流が行かなくなるからです。

血管は冷えると細くなり、温めると拡がるので、冷えると症状が出やすくなり温めると楽になるという特徴があります。


腰部脊柱管狭窄症になる原因

  1. 背骨の骨(椎体)の変形
    病名:変形性腰椎症もしくは腰椎圧迫骨折
  2. 椎体と椎体のずれ
    病名:腰椎すべり症
  3. 椎間板の変形
    病名:腰椎椎間板ヘルニアもしくは腰椎椎間板症

上記が組み合わさることに加え、脊柱管が狭いことによる腰から足の痛みやシビレといった症状がある時に、腰部脊柱管狭窄症と呼びます。

尻もちをついたり、重いものを持った、などの強い負荷や衝撃が突発的に起きたときは、損傷部位により、腰椎圧迫骨折、腰椎椎間板ヘルニアなどの呼称になります。それらが時間がたって、また日常的に腰に負荷がかかる生活を送っていて、骨や椎間板に負担がかかり、上下の椎体や椎間板にも負荷が掛かり、広い範囲で変形していくと脊柱管狭窄症になります。

下記のような方は脊柱管狭窄症になりやすいと言えます。

  • 長年重いものを持つ仕事をしてきた
  • ゴルフやテニスなどのスポーツで腰に負荷が多い
  • 若いころに尻もちをついて慢性的な腰痛がある

診断

このようなエピソードを聴取したのち、腰から足の痛みシビレの原因が腰椎にあると予測される場合に、腰椎のレントゲンを撮影します。骨の変形だけでなく椎間板の状態や神経の圧迫の程度をみる場合や、足の力が入りにくいなどの理由で手術が必要な場合にはMRI検査を行います。

治療

手術

足の力が入りにくく、つまづいてしまうなど日常生活に支障をきたしている足の力が入りにくいのが進行している、という場合には手術治療の適応になります。痛みやシビレのみであれば、はじめから手術を選択することはなく、薬物療法や理学療法により症状の緩和と日常生活の改善を目指します。

薬物療法

リマプロストアルファデクス

脊髄の血流を良くして痛みやシビレを改善します。入浴後に楽になる方には効果的です。飲んですぐに痛みやシビレが改善されるわけではなく、定期的に内服することで、痛みやシビレが出現する機会が減っていくようなイメージです。

神経障害性疼痛治療薬(リリカ、タリージェ)

電気が走るような、ビリビリ、ジンジン、といった腰から足に響く神経痛には有効です。
神経の痛みは、痛みを伝える物質(神経伝達物質)が過剰に放出されることによって生じると考えられているので、この神経障害性疼痛治療薬で神経伝達物質の過剰放出を抑え、痛みをやわらげます。
ふらつき、めまい、眠気の副作用がありますが、少量開始し、徐々に増量していくことで、副作用の頻度は減らすことが出来ます。

NSAIDs内服(ロキソニン錠・ボルタレン錠など)

いわゆる ”痛み止め” と呼ばれる非ステロイド性消炎鎮痛薬のことで、英語の頭文字をとって、NSAIDs(エヌセイド)と呼ばれます。これらの薬は、ぶつけたり、切ったりなどの”炎症”の痛みには効果がありますが、神経や血管が圧迫されて痛みやシビレが出現している”神経痛”にはほとんど効果がありません。

オピオイド(トラマドールなど)

オピオイドとは、強い鎮痛作用を示す医療用麻薬で、脊髄と脳に存在するオピオイド受容体に結合することで、脊髄から脳への痛みの伝達をブロックします。癌性疼痛にも用いられ、脳や脊髄のオピオイド受容体に作用して痛みを和らげることができます。
1ヶ月以上長期にわたりNSAIDs(エヌセイド)を内服すると、胃腸障害や腎障害等の副作用が出ることがあるので、オピオイドの服用を検討します。
ただ、吐き気、便秘、眠気といった副作用に注意して使用する必要があります。

神経ブロック注射

神経やその周りに局所麻酔薬や消炎鎮痛薬を注射して痛みをとる方法です。
一時的な効果だけでなく、興奮して過敏になった神経を落ち着かせ神経の状態を改善させます。
>>ブロック注射について詳しく見る

理学療法(リハビリテーション)

腰から足の痛みが強いと動きたくなくなりますが、長期間動かないでいると、筋肉が衰えたり、関節が固くなり、更に痛みやシビレが治りにくくなったりという悪循環を生じます。
理学療法は痛みをとるだけではなく、痛みに伴う症状をやわらげ、症状の出にくい身体を作ります。
また、筋力強化やストレッチなどにより、筋緊張をやわらげて血流を改善したり、痛みの原因物質の除去を促したりします。
>>リハビリテーションについて詳しく見る

日常生活のアドバイス

同じ姿勢を続けると、腰の中の神経が圧迫された状態が続くので痛みやシビレがでます。
神経が過敏になり痛みが持続しやすい状態を回避する方法として、下記を意識してみてください。

  • デスクワークの方は、30分に1回立ち上がる
  • 車の運転が多い方は、こまめに停車して外の空気を吸う
  • 歩くときは、痛みやシビレを我慢しないで、症状が出たら休みながら歩く

また、朝起きるときに痛みが出る方が多いのも、寝ている時は同じ姿勢になってしまうから。
ベッドから起き上がる前に、膝を抱える体操を布団の中で5分行ってから立ち上がると嘘のように楽に起き上がれる場合もありますのでお試しください。

>>腰痛の治療と予防について詳しく見る

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