手術後の痛みに対してもブロック注射は有効ですので、症状が緩和する可能性は十分にあります。
手術後の痛みの原因として、傷が治った後にできた組織が神経を圧迫したり、手術により体の構造が変わったりしために、その部分を支え切れなくなり痛みが出るといったことが考えられます。 まれに手術した周囲に感染による炎症が残って、痛みが続く場合があります。
体表に張り巡らされている神経が手術時に傷ついてしまい、痛くないはずの刺激でも体に電流が走るような痛みが出たり、鈍痛が残ったりすることがあります。
また、手術直後の鎮痛治療がしっかり行われていないと、痛みだけでなく周囲が腫れる、栄養状態が落ちて筋肉や骨がやせてしまうということが起こります。 その他にも、手術はうまくいっても「再発するのではないか」「以前のような日常生活が送れないのではないか」といった、精神的な不安が募って痛みを引き起こしてしまうこともあります。
治療のためには、まず痛みがこれらのどれによるものかを見極めなければなりません。
ペインクリニックでは、痛みのある神経の近くに、局所麻酔薬や消炎鎮痛薬を直接注射することで、症状を遮断(ブロック)して痛みを緩和します。
一時的な効果だけでなく、過敏になった神経を落ち着かせ、患部の状態を改善させます。
また、手術直後の場合でも、手術した部位に、皮膚を切開したことによる鋭い痛みや炎症による痛み・神経が傷ついたような痛みなど、強い痛みが数日間続きます。
その他にも安静によって、腰痛や関節痛を引き起こすこともあります。
手術後の痛みは、昔は当然と思われており、我慢して過ごすことも多くありましたが、現在は神経ブロック注射で痛みの伝導路を遮断して痛みを和らげることもできます。
「痛み」をうまく和らげるためには、患者さん自身が感じている「痛み」を医師に理解してもらうことも大切です。
「痛みの数値評価スケール」という痛みの「ものさし」があります。
「0を痛みがない」「10をこれ以上ない痛み(これまで経験した一番強い痛み)」として11段階に分け、痛みの程度を数字で選択する方法です。
国際的に痛みの評価ツールとして合意されているスケールで、痛みの変化を調べるために用いられています。
その時の痛みを0から10で表します。
「昨日は2だったけど、今は8か9くらいで刺すような痛みがある」というように痛みの程度や症状を伝える指標になり、痛みの具合に応じて治療方針を決めるために役立ちます。
痛みを無理に我慢せずに、適切に痛みの緩和の治療を受けましょう。
この記事は、BIG TREE. 練馬クリニックの院長、田部田 英之が
監修しています。
【経歴】
2002年 慶応義塾大学医学部卒業
2003年 順天堂大学ペインクリニック入局
2006年 保谷厚生病院麻酔科長就任
2009年 BIGTREE.練馬クリニック院長就任