糖尿病患者の認知症リスクは高くなるといわれております。認知症の中でもアルツハイマー型認知症は、糖尿病罹患者でそのリスクが1.5倍高くなるという報告も挙げられています。
高血糖と認知症の関連性
高血糖とは、血液中の糖の濃度が通常より高い状態です。高血糖が長期間続くと、身体の様々な部分に悪影響を及ぼす可能性があり、認知症と高血糖の関連性は以下のような要因があげられます。
炎症と酸化ストレス
高血糖の状態では、糖が体内の細胞に蓄積し、炎症反応を引き起こす可能性や酸化ストレスが増加し、細胞や組織へのダメージが生じます。脳にも影響を及ぼし、認知症の発症リスクを高めることが示唆されています。
血管の変化
高血糖は血管内にも影響を及ぼし、血中に糖が多くあることで血液の流れが悪くなる可能性があります。脳は体内でも酸素と栄養素を豊富に必要とする器官であり、十分な血流が維持されない場合、脳細胞が損傷し、脳血管障害(脳梗塞やくも膜下出血など)が起こりやすくなります。その結果、血管性認知症の発症リスクが高まります。
インスリン抵抗性
糖尿病患者の多くがインスリン抵抗性と呼ばれる、細胞がインスリンに対する感受性を失い、血糖値を適切にコントロールできなくなる状態になります。インスリンは脳にも影響を及ぼし、認知機能に関与することが知られています。インスリンは、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを分解し体外に出す働きがあります。糖尿病により脳にインスリンが運ばれにくくなり、インスリンの働き自体が鈍くなるため、アミロイドβは分解されず、脳に蓄積し、アルツハイマー型認知症のリスクが高まります。
その予防とは?
高血糖と認知症の関連性を踏まえると、以下の点が高血糖管理と認知症予防に役立ちます。
健康な生活習慣
健康的な食事、適切な運動、ストレス管理、十分な睡眠などの生活習慣を実践し、高血糖を予防・管理しましょう。お菓子やフルーツ、炭水化物などの過度の糖質摂取は控えましょう。また、食物繊維を多く含む食品の摂取や有酸素運動は血糖値を下げる働きがあります。
医師への相談
糖尿病患者は医師の指導に従い、適切な治療法を選択し、合併症のリスクを最小限に抑えるためのフォローアップを受けましょう。
認知症の早期発見
認知症の早期発見と適切な治療も重要になります。高齢者や糖尿病患者は定期的な認知機能のスクリーニングを受けることを検討しましょう。
高血糖と認知症の関係は深く、そのメカニズムはまだ完全に解明されていない部分があります。しかし、高血糖の適切な管理と健康な生活習慣の実践は、認知症のリスクを減少させ、脳の健康を維持するために重要な役割を果たします。個人の健康状態に合った方法で、予防と管理に取り組むことが大切です。
この記事は、BIG TREE. 練馬クリニックの院長、田部田 英之が
監修しています。
【経歴】
2002年 慶応義塾大学医学部卒業
2003年 順天堂大学ペインクリニック入局
2006年 保谷厚生病院麻酔科長就任
2009年 BIGTREE.練馬クリニック院長就任